◎連載第2回「偏差値とのつきあい方(1)」
「うちの子の偏差値はどのくらいでしょうか?」というような質問を受けるときがあります。実は、この質問は、厳密に言えば質問自体が成立しません。しかしながら、「偏差値」という語はこのように使われる場合が多いのも事実です。これは、「偏差値」という数値に大きな誤解があるからではないでしょうか。今回は、正しく偏差値と付き合うために、このお話から始めたいと思います。
●●●
「偏差値」という言葉は、「偏差値教育の弊害」などと、なぜか悪者扱いをされることが多いようです。まるで、子どもたちの能力や可能性を、偏差値によって数値化しているというイメージが強いからでしょう。しかし、偏差値というのは、単に『ある特定の試験における、特定の受験者集団の中での相対的な位置を示す数値』でしかありません。
たとえば、偏差値が50ということは、その特定の受験者集団のちょうど真ん中あたりに位置しているということになります。通常、最高得点者で偏差値75程度、0点でも25程度の数値になります。ここで、「通常」と言ったのは、試験の難易度によって、偏差値のつき方も随分異なるからです。ほとんどの受験者が満点をとるような極端に易しい試験と、逆に、全受験者の得点が全般的に著しく低くなってしまうような極端に難しい試験では、同じ点数をとっても偏差値は全く異なったものになってしまうのです。
また、受験者集団によっても偏差値は変わってきます。たとえば、中学受験の勉強をしていない層だけが受験する一般的な模擬試験で偏差値70以上を記録した受験者は、その層の中では最上位に位置しますが、同じ人物が、中学受験専門の模擬試験を受けたとしたら、偏差値50をとることも難しいのではないでしょうか。ところが、その人物が、一定の期間、中学受験のトレーニングを受けた後に再度、同様の模試にチャレンジしたならば、これまた以前とは全く異なった数値が記録されるに違いありません。
つまり、偏差値とは、その受験者の能力の高さを示すような「絶対的な数値」ではない、ということです。あくまでも、1つの試験において、その時点で、ある人物が特定の母集団のどの位置にいるのかを見る数値なのです。母集団がかわったり、試験の難易度によっては、数値は全く異なったものになってしまいます。同じ学校でも、中学で受験する場合と、高校で受験する場合の合格基準となる偏差値は異なるのが通常ですが、これは模擬試験の受験者集団の層が全くちがうからです。
中学受験の世界では、「三大模試」と呼ばれる模擬試験が有名です。四谷大塚・首都圏模試センター・日能研が主催する模擬試験を指します。それぞれ、信頼性の高い模試ですが、3つの模試を全ての受験生が受けるわけではありません。重複して受験する小学生も少なくありませんが、微妙に受験者層が異なっています。ですから、同じ受験生が複数の模試を同時期に受けたとしても、偏差値のつきかたは当然異なるわけです。
以上、偏差値とは何か、ということについて述べてきました。肝心なことは、偏差値は受験生の現在の位置を知る上ではとても有用ですが、固定的、絶対的なものではないと言うことをしっかり認識して使う必要があると言うことです。そうした認識の欠如は、「偏差値」というただの数値を一人歩きさせ、それに振り回させることにつながりかねません。
epis Education Centre 代表・澤村重基
[参考Webサイト]
■四谷大塚
■首都圏模試センター