◎連載第3回「偏差値とのつきあい方(2)」
志望校を選ぶ段階で、どうしても無視することができないのが、入学試験の難易度です。その難易度を数値で表すことができるもの、それが「偏差値」だと言えます。つまり、志望校を決めていくプロセスにおいて、この偏差値は欠かすことができないものなのです。しかし、その使い方を誤ると、志望校選択は思いもよらぬ方向へと進んでいってします。
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ここでひとつの問題を考えてください。
ある女の子が模擬試験を受けたら四教科の偏差値が73でした。志望校の桜蔭中学の80%偏差値(80%の合格可能性が得られるライン)は72、女子学院中学は71です。さてこの女の子は桜蔭中と女子学院中、どちらを受験しても合格するでしょうか。
答は「NO」だと思います。もちろん、どちらにも合格する可能性はあるし、どちらも不合格になる可能性だってあります。ただ、一般的に言って、どちらにも合格できるとは限らない、と言う意味の「NO」なのです。
この両校は女子御三家の2校で、難易度も人気も非常に高い学校です。しかも校風がはっきりしている学校であり、試験問題の傾向も全く異なっています。偏差値こそ1ポイントの差でしかありませんが、中身は全く違う学校なのです。だから、たとえ自分の偏差値が両校の基準を上回っていたとしても、合格するためには、どちらかの学校に照準を合わせて、傾向対策を施す必要があると言えます。
さらには、受験生の個性も影響します。一定の傾向のある入試問題に対して、受験生自身が「合う」「合わない」ということも考えられるのです。つまり、偏差値の高い桜蔭を合格できる受験生が、その桜蔭よりも偏差値的には低いとされる女子学院が合格できるのかといえば、必ずしもそうは言えないわけです。
ここに興味深いデータがあります。ある機関がまとめた2004年度入試の合否結果です。通常の年度であれば、桜蔭と女子学院は同じ2月1日が入試日ですから、同じ受験生が両校を受験することは不可能です。しかし、2004年度は、2月1日が日曜日となったためにプロテスタント校である女子学院は、入試日を2日にスライドしました。いわゆる「サンデーショック」だったのです。このため、2004年度入試においては、桜蔭と女子学院という並び立つ両校を併願できました。
その結果、どうだったのでしょうか。桜蔭中学の合格者データを見ると、より難易度の高い桜蔭中学が合格であったにもかかわらず、同じ生徒が女子学院中学では不合格だったという事例が少なくないのです。この事実は、偏差値が合否を判定する絶対的な尺度にはなり得ないことを証明していると言っても過言ではないと言うことを示しています。
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もう一度データを見てみましょう。
渋谷幕張中学という千葉県屈指の超人気校であり、難易度も御三家クラスという学校があります。ただし、この学校の第一回入試は1月中の実施であり、合格者は比較的幅広い層から出ているという特徴を持っています。いくら人気校とはいえ、都内入試解禁前の入試では多くの併願受験者をも考慮して合格者を出さなければならないからです。
2004年度入試の渋谷幕張の80%偏差値は、男女ともに69、つまり偏差値70を超えなければ模試では合格圏としては扱われません。では実際の合格者はどうでしょうか。60台半ばならば何人も合格が出ているではありませんか。60を下回ったとしても、偏差値50台後半ならば合格者がちらほら。中には55を下回って合格している超本番型の受験生も…。
つまり、合格偏差値というのは、「あくまでも目安でしかない」ということです。もちろん、模擬試験での偏差値が高い方が合格する可能性は高くなるのは間違いありません。しかし、基準を超えなければ合格しないのか、と問われれば明確に「そんなことはない」と答えることができるのです。このことは、実は当たり前のことなのですが、受験生やその周囲では、忘れがちなことでもあります。
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2回にわたって、偏差値について説明してきましたが、「偏差値」は受験においてはとても有用な数字であることは疑いないことです。冷酷にも現実を正確に物語ってくれます。これがなければ、志望校の決定も、合否の可能性を探ることもできません。
しかし、つきあい方を誤ると、その数字に振り回されることにもなりかねないのです。偏差値の正体を見極めて、利用できるときだけ、上手に利用させてもらうのが正しいつきあい方なのではないでしょうか。
epis Education Centre 代表・澤村重基