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読書は心の成長の伴走者

 最近、日本では「朝読書」の習慣を取り入れる学校が増え続けているそうです。毎朝、登校後の10〜15分を生徒も教師も全員で読書をする、というものです。あえて、忙しい朝の時間に読書をすることで1日のスタートが清々(すがすが)しいものであったり、勇気を与えらるものであったり…それって、すごくうらやましい習慣だな、と思うのですが、みなさんはどう考えますか?
 読書の良いところは、「本はすべての人に平等だ」ということではないでしょうか。その本の扉を開いた人すべてを未知の世界に招待してくれます。ある時は冒険の物語に誘(いざな)い、また、ある時は古(いにしえ)の知恵を授けてくれるのです。
 そんな読書を楽しむ習慣は、きっとみなさんの心の成長の伴走者になってくれると思います。これまで、あまり本を読むことが好きになれなかった人も、ステキな1冊との出会いが読書への気持ちを変えてくれるかもしれません。この「オススメの1冊」が、みなさんと本との出会いをお手伝いすることができれば幸せです。

episのおすすめ本

八十日間世界一周

photo 『八十日間世界一周』 
ジュール・ヴェルヌ(著)、鈴木啓二(翻訳)
岩波文庫










「予期せぬことなど、この世には存在しません。」

1860年代のある日、英国のロンドンにある革新クラブで、フィリアス・フォッグから発せられた一言である。革新クラブとは、地位と金を持ち、知識と気品も備えた、誉れ高き英国紳士の集まりだ。つまるところ、とてもお金持ちの男の人が所属する有閑クラブということになろうか。

八十日間世界一周は、革新クラブでの出来事から始まっていく冒険小説だ。この紳士たち、毎日ホイスト(ブリッジの元になったトランプゲーム)に興じつつ、自分たちに関係があるような無いような、そんな話題を繰り広げている。その日の話題は、当時英国をにぎわせていた、英国銀行での未解決盗難事件についてだった。なんと55000ポンドという大金が、銀行のテーブルから持ち去られたのだ。

そして、この大金を持った犯人が、どこに逃げおおせるのか、ということをみなで話しながら、世界は今では小さくなり、世界一周をする時間も短縮されたという話題に変わっていく。モーニングクロニクル紙によれば、世界一周にはたった80日しかかからないという。果たしてこれが実現可能か不可能か!! ほとんどの紳士が不可能だと言う中、フィリアスフォッグが、これを実現すべく今晩旅に出ようと名乗りでる。そして80日後に革新クラブに姿を現す約束に、大金をかけるのだ。このときの鍵になるせりふが、冒頭の一言である。

冷静沈着、常に正確さを好み無駄を嫌う性格のフィリアスフォッグが、全財産の半分にあたる20000ポンドをかけたのは、ひとえに英国紳士のプライドのためである。にしても私は思うのである。大の大人がどうしてこんなばかげたことを? でもこうも思うのである。金のためでなく、プライドのためというのがなんとも格好良い。男のロマンだなあって。この会話の2時間後、フォッグはフランス人の召使と共に、世界一周の旅に出発する。そしてもう一人、フォッグを盗難事件の犯人だと思い込んでいる刑事も…。

さて、この世界一周予定はこのとおりである。

ロンドン〜スエズ     (鉄道・客船)……7日
スエズ〜ボンベイ        (客船)……13日
ボンベイ〜カルカッタ      (鉄道)……3日
カルカッタ〜香港        (客船)……13日
香港〜横浜           (客船)……6日
横浜〜サンフランシスコ     (客船)……22日
サンフランシスコ〜ニューヨーク (鉄道)……7日
ニューヨーク〜ロンドン  (客船・鉄道)……9日

飛行機がまだない時代であるから、陸と海を旅するより他ないのだ。

この80日間に、乗り換えのために滞在する土地、その乗り物の中でさまざまな出来事がフォッグを足止めする。「ほーら、やっぱり予期せぬことばかりの世の中じゃない!」と思いながらも、フォッグがどう解決するのか気になって、どんどん読み進んでしまった。フォッグの解決方法は、奇想天外で豪快である。そしてそこには、決してマンネリにならない面白さが存在するのだ。また、各地の様子を描写している箇所にはわくわくさせられ、挿絵も見ていて飽きない。この本を家読んでいたはずなのに、読み終わった後は、「あー楽しい旅だった。疲れたー」こんな気分だった。

ゆっくりと旅に出るという時間がなかなか取れない現代社会。でも、この本を開けばそこには別世界があり、非日常的な興奮と不思議にであえます。大笑いする箇所はないけれど、なんともいえない面白さで満たされるはずです。是非この夏、手にとってみてほしい1冊です。

最後になりましたが、フォッグがかけに勝ったのか負けたのか、それは読んでからのお楽しみ。(田川美英)

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